<気分障害>
うつ病
双極性障害(躁うつ病)
など
うつ病は、今まで興味を持てていたことに興味が持てなくなる、憂うつな気持ちが続く、という症状を中心とし、気力の低下や不眠、集中力の低下など様々なかたちで生活に支障をきたします。うつ病は生涯有病率が15%と決してまれな病気ではなく、誰しもがかかりうるものです。薬物療法だけでなく、疾患教育、家庭や職場の環境調整、認知行動療法をはじめとする心理療法などが有効です。
双極性障害は、うつ状態と躁・軽躁状態を繰り返す疾患です。生涯有病率は1-2%とうつ病より罹患率が低いことが知られています。うつ状態が長く続き、躁状態がごく短期間である場合が多いこと、躁~軽躁時のご本人の自覚の乏しさなどから、しばしば診断までに時間を要します。うつ病と比較し、双極性障害のほうが治療における薬物療法の比重が大きくはなりますが、やはり疾患教育や環境調整、心理療法も重要となってきます。
<発達障害>
自閉スペクトラム症(ASD)
注意欠陥多動症(ADHD)
など
発達障害は、生まれつきみられる脳の働きかたの違いにより幼児期のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。発達障害には、自閉スペクトラム症、ADHD、学習症(Learning Disorder; LD)、チック症、吃音などが含まれます。これらは生まれつき脳の働きかたに違いがあるという点が共通しており、同じ障害名でも特性の現れ方が異なったり、いくつかの特性を合併したりすることがよく起こります[1]。
自閉スペクトラム症は、社会性、コミュニケーション、想像力の障害です。社会性の障害にはひとよりも物に興味を持つ態度、場の空気の読めなさなどの特徴があげられます。コミュニケーションの障害には、話し方が特徴的なこと、話のまとまりが悪いこと、視線を合わせにくいことなどが挙げられます。想像力の障害には、自分と「他者」の区別がつかず、「この行動を取ったら相手がどう思うか」「相手を傷つけないか」という予想がつかず不適切なふるまいをしてしまうことが挙げられます。自分と「他者」の区別がつかないと自分を客体化することもできないため、習慣に対して極端なこだわりを持ち、融通がきかなくなる、考えの柔軟性に乏しく、臨機応変に物ごとを進められないというこだわりの特徴も持つことになります。感覚過敏/鈍麻も特徴的にみられます。
ADHDの症状には不注意、多動性、衝動性があり[2]、大まかに不注意優勢のもの、多動・衝動性優位のもの、両者が混在するものに分類されます。不注意症状には、課題の細部の見過ごしの多さ、注意の持続困難、課題や活動を順序立てることの困難、物わすれや紛失、用事の忘れやすさ等が挙げられます。多動・衝動性の症状には、身の置きどころがなくもじもじそわそわする、静かに遊んだり余暇活動についたりすることができない、ひとの発言を出し抜いて答え始める、順番待ちができない等があげられます。さらにADHDには睡眠障害が合併しやすいため、遅刻や日中の眠気、入眠困難により、社会生活に大きく支障をきたす場合も少なくありません。
発達障害をお持ちの方は、社会生活の様々な場面で失敗体験を繰り返したことで自尊感情が深く傷つけられ、自信を喪失しがちです。このため、抑うつや不安、不眠、対人緊張、パニック発作、解離などさまざまな症状を呈します。これを発達障害の二次障害と呼びます。
当院では発達障害に対して問診、心理検査を通して診断を行い、よりよい生活を送れるよう支援してまいります。
・当院はコンサータ及びビバンセ処方登録医療機関です。
<精神病性障害>
統合失調症
妄想性障害
など
統合失調症は生涯有病率1%、約100人に一人の割合で発症する脳の疾患です。「悪口を言われている」「自分の行動に口出しをする声がする」といった幻聴、ひどい目にあっているという被害妄想をはじめとする陽性症状、意欲や集中力の低下といった陰性症状、思考力やコミュニケーション能力の低下といった認知機能障害がみられ、生活面での支障をきたします。早期発見、早期治療が予後の改善につながるため、気になることがございましたらお早めにご相談ください。
10代後半から20代前半、20代半ばから30代にかけて発症することの多い統合失調症に対して、50代~60代を好発年齢とする妄想性障害もみられます。女性に多く、ご近所トラブルをきっかけに妄想や幻覚に至るケースもよくみられます。薬物治療が非常に有効ですので、こちらもお早めにご相談ください。
<神経症性障害>
適応障害
強迫性障害
解離性障害
など
適応障害は、職場や家庭でのなんらかのストレス因子により日常生活や社会生活に影響が生じる状態を指します。不安、気持ちの落ち込み、焦り、不眠、食欲低下といった症状に加え、頭痛、吐き気、発熱、蕁麻疹といった身体的な症状も生じます。うつ病との鑑別が問題になりますが、定義上は「はっきりしたストレス因があり、そのストレス因がなくなれば半年以内に症状が消失する」ものであり、薬物療法に先立って心理教育や環境調整が重要となってきます。
<不眠症>
入眠障害
中途覚醒
早朝覚醒
熟眠障害
ときに不眠が改善せず1ヶ月以上にわたって続く場合があります。不眠が続くと日中にさまざまな不調が出現するようになります。倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振など多岐にわたります。このように「1. 長期間にわたり夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、このふたつが認められたとき不眠症と診断されます。
不眠の原因はストレス・こころやからだの病気・クスリの副作用などさまざまで、原因に応じた対処が必要です。不眠が続くと不眠恐怖が生じ、緊張や睡眠状態へのこだわりのために、なおさら不眠が悪化するという悪循環に陥ります。家庭での不眠対処で効果が出ないときは専門医に相談しましょう。睡眠薬に対する過度の心配はいりません。現在使われている睡眠薬は適切に使用すれば安全です。[3]
[1] 厚生労働省 知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス 総合サイト
[2] DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き
[3] 不眠症|e-ヘルスネット(厚生労働省)